失敗から生まれた平板による紙のオフセット印刷機
オフセット印刷とは、版から画像を一度転写(オフ)し、紙に印刷(セット)することから名前が付いた印刷技術です。
金属による平版印刷のほとんどがこの方法で行われているため、オフセット印刷=平版印刷というイメージがありますが、実は一度転写をして印刷する技法は、凹版や凸版印刷でも使用されています。
オフセット印刷という技術は古くから研究がなされ、1875 年にアメリカン人のロバート・バークレーによって発明されたブリキ印刷が最初の実用例と言われています。
紙へのオフセット印刷は、アメリカで石版印刷の工場を経営していたアメリカ人のアイラ・ルーベルによって、1905 年に発見・完成されました。
その発見は、ルーベルの工場で作業員が紙を補給しないままに印刷機を運転し、その後に紙を通してしまうという失敗からもたらされたと言われています。
この失敗で裏と表の両面に印刷された文字を見ると、裏面に印刷されていた文字は反転しているものの、正しく印刷された表面よりも精巧な出来上がりだったのです。
ルーベルはこれをヒントに、ブランケット呼ばれる中間シリンダーに転移させてから紙へと印刷するオフセット印刷を完成させました。
オフセット印刷の原理
出典:https://www.wave-inc.co.jp/data/dtp/offset.html
オフセット印刷の特長
19世紀の中頃にシリンダー式の印刷機が製造されたのに伴い、版の材質も石版から亜鉛版、アルミニウム版へと変化し、印刷の方式も現在、一般的に使われているオフセット印刷へと進化していきました。
オフセット印刷の利点は、精密な画線が、比較的粗面の紙にも印刷できることと、直刷りよりも刷版の耐刷力が大きいことなどです。
表面の粗い紙や特殊な素材に印刷する場合など、凸版や凹版においても、ゴム胴を挟んだオフセット印刷は行われているのですが、石版から始まった平版印刷の分野で本格化し、優れた印刷方法として発達していったことを忘れてはなりません。
絵画かリトグラフかといわれるくらい、忠実に絵柄を多色印刷できる最適な技法として、その後も芸術分野では一貫して高い評価を得続けました。
明治から大正にかけて、数多くの種類の美人画ポスターが制作されましたが、これらは江戸時代の錦絵から大きな影響を受けると同時に、石版印刷の技法を存分に駆使して成し遂げた結果ということができます。